Special Edition


「毎日一緒にいたいから、一緒に住もう」

「うん、いいよ」

「え、いいの?」

「住みたいんでしょ?」

「………ん」


あれ?

なんか俺、言い方間違えたか?

彼女は間髪入れずに答えた。

それも、『いいよ』と。


芸能人だし、人気絶頂期だし。

婚約したとはいえ、世間の目もあるだろうし。

そもそも、事務所や養父に相談しなくていいのだろうか?


「事務所に相談しなくて平気か?」

「うん」

「後で怒られても知らないぞ?」

「平気だよ」

「何で言い切れんの?」

「一人暮らしが心配だから、早く同居しろって言われてるし」

「は?」

「お父さん、アンチとかストーカーとか心配なのよ、昔からね」

「………」


アンチやストーカーって……。

そりゃそうだよな。

みんながみんな、常識ある行動をとってくれるわけじゃないよな。


「じゃあ、一緒に住むってことでいいんだな?」

「はいっ」


理解力のある社長さんで本当に有難い。

天真爛漫な彼女が大人になった今でも素直で愛らしく

それでいて、ちょっぴり小悪魔要素もプラスされて

イイ女に成長してくれて心から感謝してる。


国民の彼女を独り占め出来るこの優越感と幸福感は

生涯大事にしていかないとな。


「次の休みに部屋見に行こうか」

「うん」


15年前に突然奪われた彼女との時間を

15年かけて手繰り寄せたこの縁は

これからもずっと続いていくから

こうして彼女と手を取り合って

一つ一つ大事にしていきたい。


「美雨」

「ん?」


俺がずっとそばにいるから。

ご両親の分も。

『美雨』と呼ぶのも俺だけだからな。


眼鏡をそっと外し、彼女の唇に甘く蕩けるようなキスを。


~FIN~


< 425 / 477 >

この作品をシェア

pagetop