Special Edition
「えぇ~、またフライトですかっ?!」
「悪い。……もう少しだけ我慢してくれ」
「…………はい」
「戻ったらまた連絡するから」
「……はい」
操縦士に復帰した彼(郁さん)は、今まで以上に仕事をしている。
副操縦士としての乗務はもちろんのこと、それ以外の時間を本部長として過ごす日々。
完全に私の存在は五の次くらいの位置に成り下がった。
今日はフライトは無いと言ってたから、仕事終わりにデートをする予定で気合を入れてメイクしたのに。
急なフライト変更になったのか、たった今、『今日は会えない』との電話を受けた。
もう、四日も会ってないのに。
彼は全然平気らしい。
簡単に『悪い』で済ませられちゃうほどだから、きっと私より飛行機が好きなんだ。
飛行機に負けるって、五歳児レベルじゃない。
ショック~~~ッ!!
「彩葉、どした?デートに遅れるぞ?」
「…………った」
「あ?」
「ドタキャンされて、無くなった!」
「ハハハッ、お前、この前もドタキャンされてたじゃん」
「うぅっ……」
先週もドタキャンされ、このところ頻繁にドタキャンされる。
「今日ならうちの奥さんが行くって言ってたから、振り替えて行ったらどうだ?」
「………そうします」
半年前から先輩の勧めで料理教室に通っている。
葛城先輩の奥様はお料理上手で、趣味の幅を広げる為に通っていて。
それを聞いた私は『料理音痴』だと話した所、その教室を紹介された。
少しオネエ系の講師の先生だけど優しくて。
海外の三ツ星ホテルで10年シェフをしてた経験を持つ。