Special Edition

約一時間ほどのクルーズを終えた私たちは車に戻って、名古屋湾沿いをドライブする。

途中で車を停めて、二人で浜辺を歩く。
満月の夜だから、海に月が反射されて結構明るい。

風に靡く髪を手で押さえていると、彼がその手にキスを落とした。

「郁さん」
「ん?」
「私に直して欲しい所ありますか?」
「ない」
「ホントに?」
「ん。………あ」
「何かあります?」
「強いて言うなら……」
「強いて言うなら……?」

私の体を優しく包み込み、彼は耳元に囁く。

「もっと甘えていいぞ」
「っ……」

やっぱり、私は甘え下手らしい。
だけど、甘えるってどうするのが正解なの?

「例えば?」
「ん?」
「どういうことなら甘えてもいいんですか?どこまでならOKとか……?」
「何でも」
「え?」
「彩葉のおねだりなら何でもしてやるよ」
「っ……」

きゃぁあぁぁっ!!
今日の郁さん、めっちゃ甘すぎる~~っ!
こっちの方が顔から火が出るから。

「ぎゅうしてとか、抱っこして~とかでもいいし。言葉で言わなくても目閉じたらキスして欲しいのかな?とか分かるしさ」
「……郁さんっ、私がそんなこと出来ると思います?」
「……無理だろうな」
「ですよね」

そんなこと、口が裂けても言えない。
『ぎゅうしてもいいですか?』なら言えると思うけど。
だ、だっ、抱っこして~って、無理だって。

「試しに顔上げて目瞑ってみ?」
「え?」
「いいから、瞑ってみ」
「…………」

恥ずかしくて、瞼がピクピクしてるし……。
心臓がバクバク暴れてるのが分かる。

「んっ……」

戸惑う私の顎をクイっと持ち上げた彼。
啄むように唇が重ねられた。

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