Special Edition

「チョンア、本当に大丈夫だから……」
「んッ……お静かに」

医術の心得があるチョンアは、ソウォンのか細い手首に指先を当てる。

小指側の尺骨動脈にあたる部分に慎重に指先を当てると、盆に珠がころころと転がるような脈があることを捉えた。

「媽媽っ、滑脈かと思われます」
「……え?」
「御医を呼んで参ります」

幼い頃から兄の剣術を真似たり、商団の仕事をするようになって長旅が多くなるにつれ、怪我や病気が絶えなかったソウォンは、チョンアに教わり、沢山の医術を学んだ。
解毒の仕方、止血の仕方、鎮痛の仕方など様々。
多少であれば鍼も打てるし、傷の手当ても出来る。
その医術の心得の中で、脈診があるもの当然で。

滑脈……。
商団で雇った娘の脈を一度診たことがあるソウォンは、自身の脈を確認する。

僅かだが、ころころと珠が転がるような気がしなくもない。
だとすると……。

**

資善堂(ザソンダン)(世子夫妻の居所)にある嬪宮の居室に緊迫した空気が漂う。
チョンアが御医を呼んだことで、すぐさま王と世子にもその知らせが届いたのだ。

「どうだ?」
「御祝い申し上げます、陛下、殿下」
「御医、誠か?」
「はい、殿下。少し弱めではありますが、
確かに滑脈を確認する事が出来ます。三月程かと思われます」

ソウォンの手首に薄布が掛けられ、その上から脈診した御医は床に両掌と頭をつけ、祝言を口にした。
それを耳にした女官らも祝言を口にする。

「ソウォンっ!」
「っんッ……、世子様、皆が見ております」

ヘスは嬉しさのあまりソウォンを抱き締めていた。

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