Special Edition
数日後。
世子の生誕祭の祝宴だけでも慶事なのに、世子嬪のご懐妊の知らせがあっという間に都中に知れ渡り、国中から祝いの言葉が届く。
「媽媽、世子様がお見えになしました」
「通して」
女官が取次ぐと、ソウォンの好物を手にしてヘスが現れた。
「ソウォン、薬菓(韓国伝統の甘い菓子)を小さく作らせたぞ」
「……お気遣いに感謝します」
悪阻で食欲がないソウォンの為に、好物の薬菓を一口ほどの大きさに作らせた。
それを口に入れ、微笑むソウォン。
青白い血色が痛々しい。
「何か飲むか?茶?それとも水か?」
「白湯を」
「誰か、白湯を持って参れ」
「はい、世子様、直ぐにご用意致します」
普段からソウォンには優しいヘスだが、懐妊の知らせを受けてからというもの、政務を放り出してでも駆けつく有り様。
だが、待望の懐妊とあって、王も王妃も温かく見守っている。
「うっ……、世子様、私のことは大丈夫ですので、便殿(政務室)へお戻りください」
「……分かった、また来る」
少し前までは白檀の香りが好きで焚いていたのに、懐妊以来、その香りでさえも吐気を催すようになった。
世子の衣服には白檀の香が焚かれている。
それが原因だと、ヘスは知る由もなかった。
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ソウォンに悪阻が始まって以来、近づくことも出来ぬ日が続いたある日。
ヘスが湯浴みをしようと湯殿に入ると、そこにいたのはソウォンだった。
「ソウォン、どうしたのだ?」
「お背中でも流そうかと……」
「左様か」