愛するが故に・・・
しかし、今日は違っていた。

いつものようにお酒を作り、目の前に差し出した。


いつもなら「ああ」なのに、
今日は「ああ」の後に少し間をおいて、「お前の名前は?」と聞いてきた。

私は、びっくりした。
だって、今まで会話ということをしてこなかったのだから…

私は思わず…

『しゃべれるんですね』

と言ってしまった。
言ってしまってから、あっ!!って思ったけど、後の祭りだ。


『すいません…今まで話しかけられたことがないのに、急だったんで…』

と自分でフォーローをした。


「ああ…そうだな。
 俺はお前に興味を持ったからな。だから名前だ」

そういった。


『私は加奈です。始めに伝えたのに忘れちゃいましたか??』
と言うと…


「それは知ってる。源氏名だろ…
 お前の本当の名前だ。加奈…」


その声が…私の心の中に響いた。

なんでだろう…今まで最悪の客だと思っていたのに…
心地よい響きだ。

そうだ。この低くて、顔にピッタリな声。

その声に、私は普段なら、絶対に言わない本名を言ったしまった。
キャバクラなのに…
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