愛するが故に・・・
私は、初めて自分の父親と対面した。

母親からの手紙で父親の存在を知っていたから拒否することはなかった。
そして、父親と話をすると、とても私を心配していることが分かった。

今までのいろんな話をした。

父は母の事を本当に愛していたようで、
母と結婚できなかった後、
一度も結婚をしなかったという。
父が母の事を本気で愛していたことに私は気持ちが楽になった。


でも、父親にこれからのバイトの話とすると、顔色が一気に変わった。

「金が必要なら毎月渡すからバイトはするな」

でも、いくら父親と名乗られたところで、
今まで他人として暮らしてきたのに急に「はい」とはいえない。

私は、生活のためだけじゃなくて、社会勉強のためだと話をすると、
反対はしているものの条件付きで納得してくれた。


条件…それは私の自宅近くにあるお店に週に一回は顔を出すこと

これは、バイトというより、一人暮らしの条件。

昔から母親と一緒に月に何度か訪れていたお店だった。

そのお店は…父親の関係の人がやっているお店で、
今まで私たち親子を見守っていてくれたのだという。

そして、何かあったらそこのマスターに伝えろとのことだった

たぶん、母親も月に数回ここに訪れていたのはその為だったのだと思った。
母親が信用していた相手ならば私も異存はない。

すぐにうなずき、お互いの連絡先の交換をして、その日はお開きになった。

正直、天涯孤独と思っていた私にはどこかそれだけで、
心のよりどころが見つかったような気がした。
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