モノクロ戦争
正義の集合
日本→東京
朝。ジャムを塗ったトーストを頬張り、テレビを見る少女、大崎桜。中学校2年生。超能力者育成国立学園の生徒だ。『清く正しい超能力者』を教訓とする、いわば超能力を正しく安全に使うための学校。全寮制である。
ちなみに、桜の超能力は【念動力】。物に触れずその物を動かすことができる。それの応用で自分の体を持ち上げて飛ぶことも可能である。
<次のニュースです。最近増えてきた超能力犯罪。その原因となる超能力者を強く批判する声が…>
ここまで見ると、桜はテレビの電源を切った。チクタク、チクタク、と針時計が動く。食べ終わったあとの皿を流し台に持っていき、水の入ったタライへと入れた。
制服に着替え、隣のベッドを見ると同室の南條春奈(なんじょう はるな)はまだ寝ていた。
起こそうか。
ふと思ったが、やめた。桜自身には何の利益もないからだ。桜は靴を履き、部屋を出た。
早朝の図書室は誰にも邪魔されずに本を読める。
「あった」
探していた本を手にとり、椅子に座った。刻々と静かな時間がすぎて行く。
その時。大きな地震がおきた。図書室中の本が雪崩のように降ってくる。桜はあわてて誰もいい図書カウンターまで走り、そこに身を潜めた。
どのくらいたったのだろう。揺れが収まり、顔を上げると、沢山の本が散らばっていた。桜は何かおかしいことに気がついた。棚が倒れてもおかしくないくらいの揺れの中で、本だけが散らばっているのだ。ゆっくり右の方を見ると、床に落ちずに空中で止まっている本と、倒れかけでて止まっている本棚があった。
「…あ…」
とっさの判断で図書室から飛び出ると、廊下を歩いていた生徒にぶつかってしまった。
「ごめ…―!!」
勢いよくぶつかって、桜がしりもちをついたのに対して、生徒は同じ体制のままピクリとも動かなかった。
「生き残りたいでしょう?」
声のするほうを向くと、そこには15、16歳ほどの男の子が立っていた。
「…台詞を間違えました」
笑って頭をかく。
「Piacare(ピアチェーレ).初めまして。選ばれしゲームプレイヤーの大崎桜さん」
急に低く冷たい声になった。にっこりと笑う。
「選ばれし…ゲームプレイヤー…?」
「そうです。あなたは<正義>のグループリーダーに選ばれました」
「待って、何のこと…?」
「これは失礼しました。ボクの名前はピオです。ゲームというのは、ボクが地球を壊すまでにあなた方超能力者がどうするかを見るだけのゲームです。仲間ならつくっていますよ。…イギリスに」
「それじゃあ、今のこの状況、あなたがやったの?」
「ええ。ちなみに今もじわじわとゆっくり地球を壊していっているので、急がなければお昼の12時ちょうどに世界はドンッ…ですよ」
「何のためにそんなことするの?」
「一人で消えないための遊びですよ」
「え?」
「それではまた会いましょう。Arrivederci.(アッリヴェデールチ)さようなら」
一瞬で消える。恐らく、超能力の一種【瞬間移動】だろう。
「イギリスだったっけ…」
とにかく行ってみよう。行ってみれば細かいことがわかるかもしれない。
桜はしっかりと靴を履きなおして学校をでた。
地球の最後まで残り5時間。