青い星〜Blue Star〜
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「暖かい陽射し。包み込むような優しい風。そして、花吹雪。まさに春ですね。」
そう爽やかに笑顔を振り撒く青年。
切れ長の目、長い睫毛、形のよい薄い唇に鼻筋が通っている。
所謂美青年だ。
稽古着を着て肩に担ぐように木刀を持つ彼は只今剣術稽古の真っ最中だ。
「そう感じるのは沖田先生だけです。」
所々痣が目立つまた別の青年がフラフラと覚束ない足取りでその青年に近づく。
痛々しい怪我のせいで薄れてしまっているが、彼も相当な美青年だ。
どちらかというと、可愛いという言葉が似合いそうな感じだが。
「何ですか、佐々木さん。折角の春ですよ。春といえば逢い引き。最近、恋仲ができたそうじゃないですか。佐々木さんもスミにおけないなぁ。」
「春といえば逢い引きなんて初めて聞きましたよ!というか何で恋仲できたこと知っているんですか!?」
目を剥く佐々木にあははと笑う沖田。
そう、ここは幕末の京都である。
沖田先生と呼ばれた青年は、かの有名な新撰組の前身、壬生浪士組副長助勤の沖田総司、佐々木さんと呼ばれた青年は美男五人衆の1人佐々木愛次郎である。
鶯が鳴く麗らかな春の朝。
「ほら、佐々木さん。目を閉じて鼻で花の香りを。耳で動物たちが鳴く声を。そして、目を開ければ……ほら、そこには綺麗な朝。」
眩しそうに空を見上げる沖田総司。
そんな彼に悲劇が起こる。