青い星〜Blue Star〜
−−−−−−−−−−−
「全く、副長助勤であろう者が世話ねぇな。」
くくくっと肩を震わせながら笑う男に総司は返す言葉もない。
「そうは言いますけど、トシさん。」
「土方だ。」
そう、総司を小馬鹿にするように笑っていた男こそ壬生浪士組副長の土方歳三だ。
「土方さん。心地よい春の朝っぱらから人が遥か上空より落ちてくるなんて信じられますか。むしろ、迅速な判断と行動を褒めてほしいくらいです。」
「そいつぁ、悪かった。問題はこいつをどうするかだ。」
総司はちらっと自分の真横に目をやった。
そこには、空から落ちてきたものが横たわっていた。
あの後、総司はすぐに意識を取り戻した。
素早く懐にあった懐紙で鼻栓をすると倒れている人を抱え、布団を持ってきた隊士たちに、もう必要ないからそれを隊士部屋に敷くよう指示し寝かすと土方にこの不可思議な現象を報告した次第である。
話を聞いた土方は半信半疑だったが、論より証拠と無理矢理引っ張ってきたのだ。
「どうしましょうねぇ……処遇以前に彼は何者なんでしょうか?顔立ちは私たちと同じなのに格好はまるで異人のようですね。」
「おなごだろう……」
「へ!?おなごですか!」
改めてその人をよく見る。
確かに長身ばかりに目がいって体格まではよく見ていなかった。
言われてみれば、男にしては線が細すぎるし、喉仏がないし、胸に男にはないはずの膨らみもある。
正真正銘、女だ。
「男かと思っていたのか?まだまだだな、総司も。」
「背が高かったので、てっきり……流石土方さん!百戦錬磨ですもんね!」
「お前は一言余計なんだよ。」
ごつんと容赦ない一撃が総司の脳天に下る。
「酷い……」
「ひでぇのはどっちだ。」
本当に容赦ないと殴られたところをさすりながら恨めしそうな目で土方を睨んだ。
そんな時だった。
「うぅっ………」
隣の気配が動いた。