青い星〜Blue Star〜
「取り敢えず、鼻栓はとったらどうですか?沖田総司藤原房良(かねよし)さん。」
冷たいもの、即ち刀を当てていた青年は動揺したのか剣先がわずかにブレる。
奏はそれを見逃さなかった。
青年の手首に手刀を思い切り降り下ろした。
青年の手から刀が落ちる。
伊達に武術をやっていたわけでない。
勿論、筋力もつけてはいたが、やはり男女の差は大きい。
だからといって「女だから。」という言い訳は使いたくなかった。
古風な考え方とは思うが、戦場に立てば男女の差など関係ないのだ。
ただ、自分にとって大切なものを守る為に。
師である祖父がよく口にしていた。
だからこそ、祖父が提案してくれたのは女の軽さを利用したスピードと的確に人体の急所を突く正確性だった。
先手必勝。
スピードが速ければ速いほど相手よりも速く攻撃に転じれるし、筋力の差をスピードでカバーした。
また、人体の急所を突けば誰でもすぐに動くことはできない。
そのせいか。
今日まで男女関係なく無敗だ。
アメリカに行くと聞き、一緒に来てくれた祖父。
そんな武術バカで孫思いの祖父と過ごす武術の稽古がアメリカにいた頃、唯一『和』に触れる時間だった。
丸腰になった青年に大外刈をお見舞いしてやった。
ドッターンと派手な音が響く。
「まさか、本当に沖田総司だったとは。ハッタリだったのになぁ。」
あはは、と奏は笑った。
「総司から一本取るなんて……やるなぁ、お前。」
感心したように土方が呟く。
「痛たたた…感心している場合ではありませんよ、土方さん。彼女、私たちの名はともかく実名まで知っているんですよ。」
「おぉ、そうだった。」
呑気な土方に総司はがっくりと肩を落とす。
「まぁまぁ、沖田さん。心配せずとも名乗りますよ。私の名は沖田奏です。」
「………………………………変名(偽名のこと)ですか?」
無理もない。
漢字はともかく、音だけならば総司と一字違いなのだ。
総司の言葉はある程度予測していたが、こうも直球でくるとは彼も割りと失礼だ。