青い星〜Blue Star〜






そうだ!


朝の散歩中だったからiPodにケータイ、財布があったはず!!



奏は慌ててジャージのポケットを探ろうとした。


そして気づいた。





「何故、私はジャージを着ていたはずなのにスーツを着ているんだ!?」



「『すーつ』?」





初めて聞く単語に土方と総司は2人揃って仲良く首を傾げる。





「この着物の名前だよ。私はここに来る前、これとは違う『ジャージ』という着物を着ていたんだ。」



「『すーつ』なるものは、また随分動きにくそうな着物ですね。」


「お前らだけには絶対に言われたくない。」





確かにジャージに比べれば動きにくいが、それでも色々な企業がスーツというごく限られた範囲で少しでも快適に感じるよう工夫をしているんだ。


しかも最先端の技術で、だ。





「150年後の技術を侮るな!」



「150年後ですって、土方さん。想像もつきませんねぇ。」



「ならば、見せてやる!」





奏はスーツのポケットからケータイと財布とiPodを取り出した。





「篤と見よ!」



「と言われましてもねぇ。何ですか、これは?」



「ケータイにiPodに財布だ。本当はスマホが良かったんだが、聞けばあれはパソコンに似ているらしい。私はどうもパソコンってやつが苦手でな。あ、iPodはtouchだ。少し大きいが何分便利だからな。」





ペラペラと喋り続ける奏。


先の世の女性はよく喋るなぁと呑気に構えている総司だが話半分も理解していない。





「おっと、つい喋り過ぎてしまった。というわけで諸君、先の世の技術の素晴らしさを理解していただけたかい?」



「いえ、全く。」



「ならば論より証拠。御二人さん、『ホトガラ』はご存知かい?」


「あぁ、異国の舎密学(せいみがく…現代での化学のこと)ですね。魂抜けるんですってね。」





ホトガラとは−
即ち写真のことである。


写真は英語でphotography(フォトグラフィー)なのだが早い発話では後半が省略される。



それが日本人にはホトガラと聞こえたのだろう。





「魂は抜けない。そして150年後の舎密学は遥かに優れていて、今のホトガラは専ら二色だが150年も経つと姿だけでなく色も写すようになる。その上、あんな大がかりな機械は余程特別な時、例えば七五三の記念など以外には使わないし、小型化され携帯可能だ。」


「そいつぁ、すげえな。」





2人とも感心したようにキラキラと顔を輝かせる。


総司はともかく土方は意外だった。


どうも小説や漫画、ドラマの印象が強くて固そうなイメージばかりあったが、流石多摩のバラガキ。

まるで新しい玩具を見つけた子供のようだ。




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