青い星〜Blue Star〜
「ほら、こんな感じで先の世ではもとのホトガラに手を加えることが出来るんです。」
そこにはスリーショットではなく加工により奏が消えて間抜け面の沖田総司と土方歳三のツーショットがあった。
「事実捏造じゃねぇか!!」
「人聞きの悪い。策だと言ってくれ。あ、勿論心配しなくても3人で撮ったやつも残ってるから。」
ニコニコと笑う奏は本当にタチが悪い。
「それに、私をここに置いておいた方が身のためだと思うんだけどなぁ。」
「はぁ?」
奏の心中が判らず2人は素頓狂な声を上げる。
「私は先の世の人間ですよ。貴方たちの今は私にとって過去。先の世では寺子屋みたいなで9年間、学問を学ぶことが義務化されていて、更にもっと深く学びたい人のために高等学校や大学というものがあるんです。その中で貴方たちの事を私たちは歴史として習うのですよ。それに、この時代が好きでしたから独学でさらに深く学びました。だから、私は壬生浪士組のことでなく桂小五郎や高杉晋作、久坂玄端、坂本龍馬、吉田稔麿、伊藤俊輔、中岡慎太郎……」
「判りました!」
止まる気配のない奏のマシンガントークに終止符を打ったのは総司だ。
「なるほど、確かに厄介ですね。」
「そうだねぇ。今、ここでポイされて、行き倒れのところを運良く拾われて、その命の恩人が倒幕派や尊攘派だったら、うっかり壬生浪士組の情報や幕府の機密事項とか口走ってしまうかも。」
あはは、と能天気に笑う奏に2人は軽く殺意を覚える。
だが、裏を返せば奏は壬生浪士組の敵である倒幕派や尊攘派の情報も持っているということだ。
利用価値は充分にある。
「例えば、何を知っているんだ?」
土方が問うた。
「それを言えば置いてくれますか?」
「考えてやらなくもない。」
「判りました。1つだけ、先の事をお話しします。その代わり、他言無用と決してそれを阻止しようとしないこと。」
「約束しよう。」
奏はちらりと総司を見た。
視線に気づいた総司は深く頷く。
「私、口は固い方ですよ。」
「それを聞いて安心しました。では、今日は何年の何月何日か教えてください。」
「文久三年、卯月二十三日です。」
「あら、卯月ならば……沖田さんとこの場にはいない近藤さん。四条大橋での殿内義雄さんの件、お疲れさまです。」
「なっ……!!」
「阿比留鋭三郎さんは病気で今月六日に亡くなってますね。お悔やみ申し上げます。それから、上様の御供も。わざわざ大阪まで、大変でしたねぇ。あ、明日に家里次郎さんが詰腹で亡くなりますよ。なんだか壬生浪士組のことばかりですね。尊攘派のお話もしなくては。幕府が出した攘夷期日は来月十日ですが、幕府はすっぽかします。でも、長州藩は実行して下関海峡でアメリカ商船とフランス艦とオランダ艦に砲撃してしまうんですね。いずれの異国船は損害を受けてそのまま逃走し、長州藩は力をつけるのですが、水無月一日にアメリカとフランスから報復を受けて長州藩の武器は使用不能にされてしまいます。そこで長州藩は高杉新作に報復に対抗するため対策を命じまして、高杉自身が指揮する遊撃隊、奇兵隊ができます。」
奏から知らされた先の事に愕然とし言葉が出ない2人。
そんな2人に対して奏は喋り疲れたのか正座を崩し大あくびをしている。