青い星〜Blue Star〜
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「何だって?」
俺は古くからの友人と弟分の言うことが信じられず思わず素頓狂な声を出した。
「勝っちゃん、朝っぱらから悪いが夢じゃねぇよ。この沖田奏は空から落ちてきたんだ。現に総司が被害に遭ってる」
「そうなんですよ。見てください、これ。」
総司が指差す先には彼自身の鼻。
綺麗な顔似合わず、青紫色に変色したそれは見るからに痛そうで、勝っちゃんこと、近藤勇は顔をしかめた。
「悪かったって。根に持ちすぎだよ、沖田さん。私だって好きで落ちた訳じゃないんだ。」
近藤は土方と沖田の間に座る人物を見た。
透き通るような肌。
漆黒の艶のある高く一つに結われた髪。
大きな目に形の良い鼻、唇。
まさしく絶世の美女である。
「沖田奏さんだったかな?もう歳と総司に話しただろうが今一度君の口から君の話を聞きたい。」
近藤は改めて奏の目をじっと見た。
これでも武術を嗜んできた身。
相手の目を見れば嘘をついているか、どうか見破れる自信がある。
近藤の鋭い視線をものともせず奏は答えた。
「私の名は沖田奏。年は十八。生まれは今の武州橘樹郡、私の時代では神奈川県川崎市という名に変わっています。貴方たちのことは今の情勢も含め、歴史として学びました。」
曇りなき眼に凛とした声。
下手なごまかしや嘘は微塵も感じられなかった。
「また何故時渡りしてしまったんだい?」
奏に嘘を見抜くような疑いの眼差しを向けているにも関わらず、奏の話を信じていることを前提にした質問をしている矛盾した自分に近藤は苦笑いする。
「えっと…………それには深ーい、深ーい訳が…それはもう山より高く海よりも深い訳がありましてですね…」
今まで流暢に話していた奏が口ごもった。
よもや、と目を光らせる近藤。
そんな雰囲気をぶち壊したのは総司だ。
「あははははっ!何が『山より高く海よりも深い』理由ですか。そんな遠回しに言わず、さっさと年端もいかぬおなごに油断したところを奈落に突き落とされた浅ーい間抜けな理由を話したらいかがです?」
上戸のツボに入ったのか、畳をバンバンと叩きながらひぃひぃ笑う総司を奏はぎろりと睨んだ。
ふむ、総司の言うことが本当ならば確かに間抜けだ。
吹き出しそうになるのを、何とか耐えながら近藤はワザとらしく咳払いした。