青い星〜Blue Star〜
「なぁ、俺まだアンタに自己紹介してないこと、覚えてる?」
男たちの中で唯一月代。
子供っぽい印象を受ける、そうよな、例えるなら柴犬のような、青年が問うた。
すっかり自己紹介の途中だったことを忘れていた奏の目が泳ぐ。
「かろうじて。」
苦し紛れの言葉も彼の「正直だな、アンタ。」という一言に撃沈した。
「俺の名は藤堂平助宜虎(たかとら)。北辰一刀流目録。これからよろしく。」
ニカッと人懐っこい笑顔を向ける藤堂に「こちらこそ。」と奏も笑顔で返した。
「俺は永倉新八載之(のりゆき)。神道無念流免許皆伝。よろしく。」
髪型って性格出るなと思うほど適当に一つに纏められた髪は美丈夫である分、現代っ子の奏にとって非常に惜しい感じがする。
無論、本人に言えないが、それも含めて彼の良さなんだろう。
「シメは私か。井上源三郎だ。天然理心流免許皆伝。気軽に源さんと呼んでくれ。」
「確か、源さんはここにいる人の中で最年長ですよね!」
「そうだよ。困ったことがあったら、いつでも来なさい。最年長として話を聞くくらいは出来るから。」
源さんの笑顔、なんか懐かしいなぁ。
何だか、お父さんみたい。
なんだかんだ、私もいきなり幕末に飛ばされて嬉しい反面不安もある、若干ホームシックだ。
だから、こんなことを口走ったのも、そのせい。
「貴方たちのこと、家族だと思っていいですか?」
男たちは驚いたように目を見開いた。
だが、すぐに優しい笑みを湛える。
「あたりめぇだ。」
無愛想だけど私が欲しい言葉を真っ先に言ってくれるのは、やはりこの江戸っ子か。
奏もつられて微笑んだ。