青い星〜Blue Star〜
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「一体何用だ。俺たちも暇でないのだが。」
不機嫌丸出しの土方に奏は噛みついた。
「今すぐ隊士部屋の大掃除をしろ!全員で!」
奏の無礼に総司が奏の首根っこを掴む。
「おい、口のきき方に気をつけろ。」
シャレで済まない総司のドスのきいた声に一瞬怯んだが、ここで引き下がるわけにいかない。
「お前こそ私に対して失礼だ。」
「役職はそうだが、経験が物言うってんだ。昨日入隊したばかりの新人が偉そうに。」
「屁理屈を……それより今はこの隊士部屋だ!」
奏の叫びに皆一様に隊士部屋がどうしたと言わんばかりに首を傾げる。
衛生という考え方があるかないかでこんなに価値観が違うなんて……
奏ががくりと項垂れた。
そして気づいてしまった。
隊士部屋の悪臭があまりにも酷すぎて気づかなかったが隊士たち自身からも同じような臭いがする。
悪臭というか家畜みたいな臭いだな……
春でこんな状況なのに夏場はどうなるんだ?
これからどんどん暑くなってくる。
その上京都は盆地だ。
先の事まで考えると目眩がした。
聞くのも恐ろしかったが一番臭いが酷い隊士に話しかける。
「失礼だが、風呂の頻度は?」
「はい。五日にいっぺんです!」
「下着はどのくらいの頻度で交換している?」
「二日にいっぺんです!」
「着物は?」
「そりゃ毎日変えますよ!」
あまりの衝撃的な答えにもう心臓が止まりそうだ。
「それを自慢げに言える所なのか、此処はーーーーー!!」
奏の叫びは悲鳴に近い。
「此方が臭気にあてられて、やられるわ!!いいか!病の最大の治療法はまずは病にかからない、即ち予防にある!その為には規則正しい生活、身の回りの清潔、滋養の高い食事が必要不可欠だ!貴方たちにはそのひとつの身の回りの清潔というものが欠けている!自分が生活している場所だから違和感を感じないかもしれないが医者の私から言わせれば、これほど病になりやすい部屋はない!!いざという時に体調不良で刀が握れないなんて最悪な事態になってからでは遅いんだぞ!私は貴方たちの貴重な時間を割いてまでこの部屋の掃除を要求する!!」
奏の剣幕に男たちは逆らえなかった。
女の方が強いのはいつの時代も共通である。