青い星〜Blue Star〜




「そもそも、こんな事を話す為に連れ出したんじゃねぇ。」




突っ伏した総司だったが、幾分か落ち着きを取り戻したらしい。
(明日の土方や原田の朝餉にネタを仕込むことにしたのは言うまでもない)




「こんな事とはご挨拶だな。」



「頼むから、これ以上突っ込んでくれるな。」




奏に口では勝てないことを悟った総司は頭を下げた。

屈辱の為か肩が震えている。

あとで土方から聞いたが、総司は嘘が下手だが相手を追い込む論法は隊一と言っても過言ではないらしい。

つまり良く言えば口が達者、悪く言えば毒舌だと言うことだ。



奏は総司のこういう一面をとても意外に思っていた。

奏が平成にいた時、沖田総司を好いていた理由は病に冒されながらも最期まで進撃できることを疑わず、近藤勇や土方歳三の盾として刀として、主に忠実に生き抜いたことにある。

勝手な解釈だが、そのために思想関係なく、心を殺し、冷酷な鬼であったと。



だが、実際は少し違った。

総司が近藤や土方の武器であるには変わりないだろう。

しかし、総司は口達者、則ち頭の回転は速い。

口が上手いというのは、それこそ立派な武器である。

現代で言えばお笑い芸人が生き残る為に不可欠な武器だ。

もっと言ってしまえば死活問題に関わるのだ。



沖田総司が口達者なんて、絶対どこの本や検索サイトに載らないだろうな。

幕末に来て沖田総司と親しくならないと判らないような事柄。

それに触れて奏はとても嬉しくもあり、益々沖田総司が好きになった。

同時にもっと総司のことを知りたいとも。




「いいか、俺がお前を馬鹿と言ったのは他でもない。」




総司の言葉に奏はハッとした。

どうやらマイワールドにトリップしていたようだ。




「お前が振るのは刀じゃねぇだろう。刀を振るくらいなら俺にだって出来る。そうじゃない。お前は最初になんと言った?」




鋭い目に睨まれ奏は肩を竦めた。
それはただの沖田総司でなく壬生浪士組副長助勤沖田総司のものであった。

改めて平和な平成と死と隣り合わせの幕末を感じさせるような。


ここで押されたら敗けだ、と奏も総司の目を見て言った。




「貴方たちを守る。それだけだ。」




奏の返答に総司は満足したというように微笑んだ。




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