青い星〜Blue Star〜
「……尻に敷かれているようだね。」
吉田が気の毒そうに総司の肩を手を置いた。
三人は刀を納めており殺気も消えていた。
「判ってくれるか。アンタとはいい友人になれそうだ。」
「奇遇だね。僕もだ。」
どうやら苦労人同士で気があったらしい。
総司と吉田は熱い抱擁を交わしている。
「俺のことは総司でいい。」
「僕も稔麿でいいよ。」
二人は離れると何やら話し合い始めた。
距離が近すぎる気がするのは気のせいではない。
「総司はその顔どうしたの?見てて痛々しいよ。美丈夫なのに台無しだ。暴漢にでも襲われたのかい?」
「それが元凶は奏なんだ。」
「その青っ鼻と大福が?」
青っ鼻と大福とは言い得て妙である。
鼻は青と言うより紫色であり、冷やし足りなかった頬は赤みこそ引いたが大福のように膨れている。
「おかげで人目を引いて。それが皆、憐れみの目。」
「そうだろうね。しかし奏さんもやるな。」
「全くだ。こっちの身にもなれって話だ。」
すっかり意気投合した二人に奏は諦め、高杉と桂に向き直った。
(ちなみに梅之助とは高杉の変名である。)
「完全に意気投合したな。あの二人を除いて話をするわけにもいかないから、暇潰しに手品を披露するよ。」
「へぇ!得意なのか?」
高杉が感心したように言う。
余談だが手品という言葉は幕末でも通じる。
そもそも手品という言葉は江戸時代に生まれたのだ。
だが、江戸時代の手品というとマジックと言うより奇術であり、そのあたりは桂、高杉と奏の間で認識の溝がある。
「多分ね、高杉さんが想像しているのと違うよ。」
「高杉さんなんて他人行儀だな。俺と奏の仲じゃないか。」
どんな仲だ、と喉まで出かかった言葉を奏は抑えた。
この男に何を言ったところで通じないだろう。
「あー……晋作。だから、君たちが想像しているのと違って、お遊びな数字の不思議だよ。」
『数字の不思議?』
いつの間にこちらに来たのか総司と吉田、桂と高杉、四人の声が綺麗にハモる。
「あれ?二人とも来たなら話を……」
『今は数字の不思議が大事だ。』
よくも、打ち合わせもなしにここまで綺麗にハモるもんだ。
ヒュペった。
奏の脳裏にスケッダンスという意図のない単語が浮かんだ。