青い星〜Blue Star〜
「ごほん!では手始めに数字の不思議其の壱を紹介しよう。皆さん、1から9のうち好きなものを思い浮かべて。」
『思い浮かべた。』
「その右に零をつけて。」
『つけました。』
「二桁の数字になっているでしょう。その数字から最初に思い浮かべた数字を引いて。」
『引きました。』
「では、その二桁の数字の一つを私に教えてください。もうひとつの方の数字をずばり当てましょう。」
信じられないと顔を見合わせている四人。
しかしながら、この不思議の証明自体は中1レベルであったりする。
「まず晋作。どうぞ。」
「三だ。」
「じゃあ、もうひとつは六だな。」
「当たりだ。」
こういう時に如何に簡単なタネでも誇らしげにするのが手品師の心得だ。
「次、桂さん。」
「二だ。」
「ではもうひとつは七だな。次、吉田さん。」
「四だよ。」
「ではもうひとつは五だ。」
ぴたりと当てた奏に三人は羨望の眼差しを向ける。
満更でもない奏は調子に乗った。
「では最後に総司。」
「判った。」
総司はしたり顔で奏を見据えた。
その見透かすような視線に奏はドキリとする。
「九の倍数だろ。」
「……………………」
「最初の数を○として、右に零をつける、則ち十倍だから十掛ける○。そこから○を引けば九掛ける○で九の倍数。九の倍数は全ての位の和が九の倍数になる。今は二桁だけだから和が九になりゃいいんだ。」
沖田総司って博識だったのか?
総司の完璧な証明に奏は感心した。
「お見事。その通りだ。やるなぁ、総司。」
「算術と言葉遊びは得意なんだ。俺は小せぇ時に両親が死んじまったから、九つまで姉上が面倒見てくれてたんだが、上のミツ姉が大人になった時に苦労しないよう学ばかりさせられて。俺は林太郎さん(※)と剣術の稽古をしたかったんだが二の次でよ。勉学なんて嫌いだったが、算術と言葉遊びだけは得意だった。まぁ、その代わりそれ以外は真面目にやった記憶がないが。」
総司は照れ臭そうに笑った。
対して奏は歴史の本には記されないような沖田総司の新たな一面に触れ、顔にこそ出さないが内心大興奮である。
※総司には二人の姉、ミツとキンがおり沖田林太郎はミツの婿養子である。
総司の父、勝次郎が病死した際、幼かったため家督相続出来なかった総司に代わり沖田家を継ぎ沖田家を守った。
一方、総司はその為に沖田家長男でありながら家督相続出来なかったという複雑な事情を持っている。
総司が沖田家を継がなかったのは大望の為脱藩したとも言われているが当時総司は子供であり(四つくらい)、私自身は前者の考え方なので、そちらを採用しています。