青い星〜Blue Star〜
「ねぇ。」
突然かけられた声に驚いて振り向く。
そこに立っていたのは着物を着た幼い女の子だった。
ジャージ姿の自分達とは対称的で、今時着物姿なんて酷く違和感を感じる。
さらに奏を驚かせたことには彼女はまるで気配がしなかった。
例の祖父の洗礼で武術に関しては私の右に出る者はそうそういないと思っていた。
気配を読むのは得意なのに……
「ねぇ、お姉ちゃん。待っていたよ。」
女の子はそう言いながら奏の方に歩み寄ってきた。
何故かその子はこの世のものでない感じがした。
脳が警報を発しているが体が動かない。
「奏!」
武術の心得がないゆきも本能で女の子がおかしいと感じたのか金縛りにあったかのように動けない私の手を握り走り出した。
おかしい。
おかしい。
何かがおかしい。
女の子のことだけでなく。
「ねぇ。」
ゆきが走りながら怯えた声を出す。
「私たち早朝に出掛けたよね。今日大学あるから時間も確認しながら行って、あの場にいたのもほんの10分くらいだったよね……」
ゆきに言われて違和感の正体に気づいた。
『どうして空が赤と紫と黒が混じったような色をしているんだ?』
逢魔が時のような空。
そして走っても走っても見えない壬生寺の出口。
さっきまでたくさん人がいたはずなのに今は私たち2人しかいない。
恐ろしくなってふと腕時計を見た。
「え……」
時計は狂ったように長針と短針がぐるぐると物凄い勢いで回っている。