オネェはしたたかに罠を張る
「やっぱり課長が断トツでかぁっこいいですぅ~」
気の抜けた、やたらと語尾の長い声が右隣りから囁かれる。
こんのクソ忙しい時に何事か、と反射的にそちらに注目をすれば、大きな目をウルウルとさせながら熱心に携帯を構えている可愛らしい女性の姿。
その視線は一心に我が課のアイドルへと注がれていらっしゃる様だ。
ちょっと、またやってるよ……。
写真は一週間前に注意されたばっかじゃなかったっけか?
明るい茶色に染められたフワフワとした髪型、ナチュラルで魅力的な化粧を施された顔。
おまけに携帯を持つ手はマニキュアがご丁寧に塗られており、ささくれや豆がどこにも見当たらない綺麗なそれだ。
……まぁ、今時の女の子といったらドコもこんな感じなのだろうな。
兄弟が多く、炊事全般を幼い頃からしている私とはたいした違いだけれど。
羨ましくはないけれど、ただ単純に可愛いいなぁ……と思う時があるのは否定できない。
見た目はさておき、実は普段はとってもパソコンに強い頼れる後輩ちゃんなんだが、ある条件の時に厄介な癖(?)が出てしまう。
「今日のワインカラーのネクタイもとぉっても似合っていて、素敵ですぅ~。」
「……あのー、佐々木ちゃん?」
「あぁ~……、本当に勿体ない~。 せっかくのイケメンが可哀相ですよぅ~。」
「おぉーい……、仕事をしてくれー……」
「どうしましょぅ~、こうなったら強制的に男性恐怖症にさせてぇ~……。」
「佐々木ちゃん!!?」