ひだまりの若葉~砂漠の女王~
「マリは黙って首を横に振った。

 自分は逃げられないと、わかっていたんだな。

 ヒタもホントはどっかでわかってた。

 だって自分じゃ助けられなかったんだ。

 それでもやっぱり、助けたかった。

 だからヒタは、思いきって自分の秘密をばらした。」


辺りはもう真っ暗で、もうすぐ夜が明けるだろうかという時間でした。

だからこそ、焦りながらも、

彼は全てを話しました。

故郷であった全てのことを。

毒蛇の姿をした魔神のことを。

人間の身体を欲しがっていたことを。

自分が……その身を捧げると申し出たことを。


「俺は蛇の魔神と契約交わしたバケモノだ。

 アイツは俺の中で眠ってる。

 俺が、一人の人間と四回会ってしまうのを待ってる。」


四回目はない。

それは、ヒタという人格が消え去り、

あの毒蛇が目覚める時。


「……そうですか。」


「マリもたいして驚きはしなかった。

彼女にとって頼りになる感覚ってのは

見た目じゃない。

だから、人にはない雰囲気を、なんとなく、感じとっていたんだな。」


覚悟をして話したにもかかわらず、

マリがまったく変わらないことに、

ヒタは思わず泣いてしまいそうでした。

けれど、わざと突き放したように、言いました。


「俺が若葉とこうしていられるのは夜が明けるまでだ。

 もう時間がない。陽が昇れば四回目とカウントされる。
 
 だから最高でも三日間しか一緒にいられないんだ。俺は。誰とも。」


思えば、三日間も誰かと一緒にいたのは、

故郷を出て以来、初めてでした。
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