ひだまりの若葉~砂漠の女王~
「物語は、これにておしまい。どうしたんだよみんな黙って?

ちょっとしんみりさせすぎちまったかな。

 でもま、たまには、こんなガラにもねぇ話もいいだろう?

 え? なんだって俺様がこんな話を知っているのか?

 そりゃあやっぱり、企業秘密だな。

 それとも、即興でハッピーエンドバージョンを作ったら、

 も一度聴くかい?」

 
 悲しいお話に浸っていたお客はみんな、

 そんなものを聴きたくはありませんので、

 いそいで帰っていってしまいました。


「またひとこと多かったな……言わなきゃよかった。

 反省反省……おや、きみはまだいたのかい?

 付き合いがいいね!」


 ひとりだけ、まだ残っていた少女がいました。

 青年を囲んで集まっていた人たちの中で、

 最後まで、いちばん遠くで、祈るように聴いていた少女でした。


「……たいです」


「え?」


うつむきがちな上に、遠い上に、とてもちいさな声だったので、

青年はよく聞き取れませんでした。

少女のそばへ寄ってみると、

青年は、彼女が泣いていることに気付きました。


「幸せな結末が、聴きたいです」


少女は今度は顔を上げていいました。

瞳に涙をいっぱい浮かべて。


「逢いたかった……ヒタ」



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