わかってるさ、お茶だろう?

 言わなくても握ってくれるんだ。

 気づいているくせにわざと握らないのか、この魔性は。

 そこでふと気づくことがあった。

 思わず足を止めてしまう。

 「…この間左側に立った時も車道側だった」

 今もそう、右側つまり車道側。

 「…あたしのため?」

 聞けば、握られた手に少しだけ力が込められた。

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