勿忘草
大して年齢も変わらない。それにも関わらず、俺と彼女の間には、埋めるには深すぎる溝があった。無論、埋めようとは思ってはいない。それは先ほど彼女が言った五年前の約束があるからだろか。
―――否、そう言っていれば逃げられるような気がしていたんだろう。
「…春架様、そろそろ時間でございます」
「…お前がくだらない話で引き止めたんだろう」
言って後悔をする。ハッとして顔を向ければ、予想通り彼女は笑っていた。
「申し訳ありません。食卓の用意は既に済んでおりますので。…外でお待ちしております」
パタン、扉はごく自然な音を出して閉まった。