エナメルの楕円形
エナメルの楕円形



「麻美(アサミ)の爪はね、形がキレイだもん。マニキュアがね、きっとすっごく、似合うよ」


そう言って笑う友里(ユリ)の、肩の上で弾む様に揺れる栗色の巻き髪には、よく見ると小さなラメが散りばめられている。

オフィスの蛍光灯の下で、何とも無意味にキラキラと、無駄な存在感を放っているけれど、友里にはそれがとてもよく似合う。


「……そう、かな」


私は視線を友里から逸らして、自分の爪を眺めてみるけれど……何て事はない。
随分見慣れた、つるんとした楕円の形があるだけだった。


「あ、だめ! 貸して! あたしがマニキュア、塗ってあげるから!」


友里の前から手を引っ込めて、デスクの上のお弁当の続きに取り掛かろうとした私の手を、友里はパンを片手に持ったまま、そう言って引き止めた。


「今日ね、一本、持って来てるんだ。ほら、あたしのシュシュとね、お揃いの色なの」


そう言って友里は、マニキュアを一本、鞄から取り出すと、耳のうしろで髪を束ねている自分のシュシュと、わざわざ色を比較して見せる。


「あ、本当だ。……かわいいね」


本当はそんな風には、思ってはいないのだけれど。


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