エナメルの楕円形
「麻美はね、もっとお洒落すればいいんだよ。麻美、可愛いのに、もったいないじゃん」
友里のネイル作業は、今度は私の左手に取り掛かる。
「今度、あたし、お洋服も選んであげるし。髪もね、巻いてみたら? せっかく長いのに。色も、ちょっと変えてみてさ。それから、化粧ももう少し。ほら、ネイルも、ね? こんなに可愛い」
友里の艶々のピンク色のリップは、今にも顔からはみ出してしまいそうに、無意識に私を責め立る。
……ねえ、友里。
私って、本当に地味でしょう?
華がないのよね、よく言われるの。
もう25にもなるのに、まともな恋愛もできない。
……ねえ、でも友里。
あなたの大好きな亮ちゃんはね、そんな私の目を見て、こんな事を言うのよ。
『麻美の良さは、目には見えないものなんだ。麻美の可愛らしさは、僕だけが知っていればそれでいいんだから』
……ねえ、友里。
陳腐な口説き文句だって、そう思わない?
地味な女が喜ぶ台詞を、あの人はちゃんと知っているの。
酷い人よね。
怖い人よね。
あなたの大好きな亮ちゃん。
私は瞬きもせずに、ピンク色に染まっていく自分の爪を見ている。