エナメルの楕円形
「ほうら! できた! 麻美、ネイルなんかした事ないでしょう?」
味気ない私の楕円形は、友里によって輝くラメのピンク色に。
ツンとした匂いが、何だか艶かしい。
……悪い女になった気分。
「……うん。マニキュアなんて、初めて」
本当はね、嫌いなの。
濃いめのメイクもネイルも巻き髪も。
だってそれはみんな、友里が持っているものだから。
「あっ! 亮ちゃん! おかえり!」
友里はマニキュアを鞄に仕舞いながら、大好きな旦那様の姿を見付けたみたい。
「おーー、また二人だけかあ。みんなランチ出たんだろ? ほら、お土産」
「わあい!」
お土産は、友里の大好きな玉子プリン。
それか、駅前のケーキ屋のエクレア。
……いつもそう。
芸がないんだから。
「やったあ! 麻美! 玉子プリン、2つあるよ! ほら!」
「……すいません。私まで、いつも戴いてしまって」
そう言って亮一さんの視線に私の視線を合わせると、私の背中が一瞬で硬直するくらい、彼の鋭い視線が真っ直ぐに突いてくる。
奥さんを目の前にして、どうしてそんな顔ができるの。
怖い人。
狡い人。
なのに視線を逸らせない。