天使の舞―後編―
少し息を弾ませてはいたが、シュカはキャスパトレイユに一礼すると、丁寧に話を始めた。


「キャスパトレイユ様はまた、乃莉子様を悲しませるおつもりですか?
今、感情のままに人間界へと行かれても、キャスパトレイユ様を取り巻く状況は、何も変わってはいないのですぞ。
お二人で天界に戻って来たときに、またライラ様あたりがお出迎えにでも来られたら、意味がないのではありませんか?
乃莉子様が大切なら、きちんと致しませ。
天界の娘達にも、誠意ある対応が必要になるでしょうな。
恐れながらシュカめは、そう愚考致しますが。」


「・・・・・。」


キャスパトレイユには、返す言葉もなかった。


シュカの言葉が胸に刺さり、キャスパトレイユは呆然と立ちすくむ。


今この瞬間程、過去の自分の行動を悔やんだ事はない。


すぐにでも、この手の中に抱きしめたいと願う、愛する女性を泣かす事になろうとは、キャスパトレイユは、想像もしていなかったのだ。
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