天使の舞―後編―
乃莉子の体に一気に緊張が走り、強張った。


ゆっくりと這いまわるキャスパトレイユの大きな手に、体が火照り、むず痒さが乃莉子を襲う。


しかし、恥ずかしさの方が上回った乃莉子は、無意識にその手をピシャリと叩いていた。


それを合図にキャスパトレイユの手の動きは止まり、抱きしめられたまま何事もなく、乃莉子は朝を迎える事となる。


何だか拍子抜けした思いが残った乃莉子は、残念がっている自分がいる事に気づき、まさかと驚いた。


好きな人になら、抱きしめられて触れられるのは、とても心地のいい事なんだと、乃莉子は安心できた。


矢崎に突然抱きしめられた時は、早くその腕から逃れたかったし、アマネに強引に服を脱がされた時は、恐怖でしかなかったのだ。


「でも・・・あんな事言った手前、すぐに許すのもなぁ・・・。
好きものみたいに思われても、癪だもん。」


そんな乃莉子の思いから、数週間もの間二人は、悶々と夜を過ごす羽目となった。


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