天使の舞―後編―
---何週間か後。


飽きることなく、毎晩のように乃莉子に絡むキャスパトレイユは、頬が緩みっぱなしであった。


あんな事や、こんな事。
拒まれるのを覚悟で挑んだ、あれまでも。


何も知らない素直な乃莉子は、夜の営みとはそういうものかと、キャスパトレイユに言われる通り、全ての要望に応えていた。


『乃莉子は何て可愛いんだ』


若干、キャスパトレイユの方が、年が下に見えるのだが、立場はどうやら逆転しているようである。


過去、天界の娘達と事に及ぶ時には、常にキャスパトレイユは冷静であった。


女性の、一番素が出る場面でもあり、一番演技ができる場面でもあるからだ。


妃に相応しい娘かどうか、見極めなければならないキャスパトレイユは、その時ばかりはいつも冷静で、しかも朝まで一緒に過ごした事もなかった。


事が終われば、それで終わり。
余韻に浸る感情は、持ち合わせてはいなかった。
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