天使の舞―後編―
期待して聞いたシュカに、返って来た言葉は。


「・・・教えねぇよ。」


キャスパトレイユは、毎晩見る乃莉子の乱れた姿を思い出し、いやらしくニヤッと笑った。


見たことも無い、キャスパトレイユのニヤけた顔に、一瞬戸惑ったシュカだったが、彼もまた、ふっと表情を崩す。


「・・・・・・・・・・。
キャスパトレイユ様の、そのようなお顔を、シュカは初めて拝見致しました。
理由はなんであれ・・・。」


キャスパトレイユの王子らしからぬ、その緩んだ表情は幸せに満ち溢れ、シュカにふと、遠い日の若きウェルザを思い起こさせ「なるほど」と、納得させた。


「それは、大変良きことです。」


シュカはうんうんと頷いて、僅かに潤んだ瞳をキャスパトレイユに向けた。


「急に何だよ・・・変な奴だな。」


涙目になっているシュカに訳が分からず、キャスパトレイユは、思いっきり眉をしかめた。
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