天使の舞―後編―
苦し気な乃莉子を見て、冷静さを失ったキャスパトレイユは、抱いてはいけない、やましい感情が脳裏を過り、それを口に出してしまった。


「まさかとは思うけど。
お前達・・・乃莉子に何か、したんじゃないだろうな。」


「まぁ・・・いくらキャスパトレイユ様でも、その言われようは、あんまりですわ・・・。」


トルティナは口に手を当てて、ワナワナとキャスパトレイユの側から、一歩下がった。


その会話を聞いて、乃莉子は苦痛に歪む顔で、キャスパトレイユを見上げる。


「関係・・・ない・・・よ。
2人は・・・関係ない・・・。
突然・・・背中が・・・。
背中が・・・痛い・・・の。」


「背中?背中が痛いのか?」


キャスパトレイユは、取り乱しながら、必死に乃莉子の背中を擦っていた。


懸命に乃莉子を介抱する、健気なキャスパトレイユの姿を目の当たりにして、トルティナもライラも、失礼な言葉の事など、責めたり出来なくなってしまった。

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