天使の舞―後編―
でもその空気に気付かない乃莉子は、立ちあがってドレスの方に歩み寄り、聞かれた事に素直に返答した。


「アマネとヨゾラくんだよ。」


そして、キャスパトレイユに試着しろと言われた、淡いクリーム色のドレスを手に取ると、乃莉子は振り向いて、にこっと微笑む。


しかし。


キャスパトレイユの淀んだ顔を見て、乃莉子の笑顔は一瞬で消えた。


そして、その淀んだ顔の上空には、焼きもちで出来たオドロオドロシイ空気が渦巻いていて、鈍感な乃莉子にも、今度はよく分かった。


「キャ・・・キャスの方が、数倍格好よくて、優しいけどね。」


乃莉子は慌ててそう付け加え、防御策を張る。


「そんなの当然だろ。
乃莉子さ、俺の前で、他の男の話なんかするなよ。
お前は俺だけ見てれば、それでいいの!
あー・・・もう・・・。
乃莉子を二度と、あいつらに会わせないからな。」


「何それ・・・。」


キャスパトレイユの怒りっぷりに呆れた乃莉子だが、一転クスッとため息混じりの笑顔を見せたのだった。
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