天使の舞―後編―
ミルクティー色の髪に手を添えて、キャスパトレイユはバツ悪そうにくしゃくしゃっと、再度掻きまわした。


「乃莉子は、俺より天使みたいだな。
やっぱり、人間は基本‘善’だ。
俺はこんな事、今まで考えもしなかった。」


「そんなことないよ。
私にだって‘悪’の部分は、絶対あるよ。
だって・・・イザヨイさんの事、憎らしく思ったもん。
キャスの事も、酷いって思ったよ。
人間は皆、天使と悪魔、両方の部分を持ってるんだと思うな。
人間じゃなくても、もしかしたら、天使にも悪魔にも・・・。
だから、この三つの世界は、成り立ってるのかもしれないよ。
・・・なぁんてね・・・。」


乃莉子は言い終えると、恥ずかしそうにチロっと、小さく舌を出した。


そんな乃莉子の仕草に、キャスパトレイユは軽く目を瞑り、大げさに肩をすぼめて見せる。


「敵わないな・・・乃莉子には・・・。」


そう言って、愛しい妃を力いっぱい抱きしめたのであった。

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