天使の舞―後編―
こんな割れんばかりの歓声の中、1人注目を浴びて舞い踊るなど、想像するだけで乃莉子は失神してしまいそうだった。


キャスパトレイユの隣に威風堂々と君臨して、天使達へと言葉を述べている天王ウェルザが、何を喋っているのかさえ、全く耳に届いてこない始末である。


話し終えたウェルザが、乃莉子を促した。


「では、乃莉子。」


「・・・・・・・・・・。」


「乃莉子?」


「・・・・・・・・・・。」


当然ウェルザの声は、乃莉子には聞こえていない。


頭の中は、舞の事で飽和状態なのだ。


「おい乃莉子!」


見兼ねたキャスパトレイユが、軽く乃莉子を揺さぶった。


「あっ!はい!」


素っ頓狂な声を出して、乃莉子は我に返る。


「あ~・・・。
では、舞いを。」


ウェルザが仕切り直したところで、遂に、この時が来てしまった。

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