天使の舞―後編―
何も言わずとも、その若者が魔界の若き王である事は、天界の者達にもすぐに分かったようだ。


類稀なる美貌に、圧倒されるような威厳は、次々に降りて来る大勢の悪魔達とは明らかに違うからだ。


それに、この若者の翼は、一際大きい。
魔王である事は、間違うはずもなかった。


「おうアマネ、待ってたぞ。
よし、始めるか。」


「その前に、俺にもひとこと言わせろ。」


アマネは、急かすキャスパトレイユに苦笑した。


「天界の天使達よ。
この度の招待、遠慮なく受けさせてもらった。
天界の新王の寛大なる申し出に、感謝の意を表す。
この通り、魔界を代表して礼を言う。」


天使達は、若き魔王の姿に目を疑った。
悪魔が・・・魔界の王が、天使に頭を下げたのだ。
とても信じらるものではなかった。


悪魔に対する天使の見方が、変わった瞬間である。


一通りのあいさつを済ませると、アマネはさっさと乃莉子に向き直った。
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