天使の舞―後編―
「矢崎さん。
さっきの女の子、イザヨイさんの事は、覚えてますか？」


矢崎は明らかに分からないという顔で、腕を組み、考える素振りを見せた。


乃莉子はそんな矢崎に教える。


「矢崎さんは、その･･･なんて言うか･･･操られたって言うか。」


潜在意識を後押しされたとは、恥ずかしくて言えない乃莉子は、言葉を濁してやんわりと説明する。


矢崎の想いを、乃莉子は受け入れられないからだ。


「操られた？
催眠術みたいなもんかな？」


「催眠･･･？
･･･そう！そうです！
矢崎さん、催眠術にかけられちゃったんですよ！」


「いつの間に･･･。
全然分からなかったよ。」


矢崎は不思議そうに、納得いかない表情で、乃莉子に微笑んだ。


「俺、乃莉ちゃんに何か･･･したのかな？」


矢崎が乃莉子に、申し訳なさそうに、問いかけた時だ。


「おい！お前達！離れろ！
俺の分からない話で、盛り上がってんじゃねぇよ！」


不機嫌な声と白く長い腕が、乃莉子と矢崎の間に、割って入ってきた。


< 25 / 142 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop