天使の舞―後編―

  記憶に悪戯

メルヘンの店内は、女性客で賑わっていた。


キャスパトレイユが、人間界へ来て早1ヶ月。


乃莉子と片時も離れたくないキャスパトレイユは、またもメルヘンで働いていた。


そんなキャスパトレイユのエプロンの左胸には『キャス』と書かれたネームプレートが、付いている。


キャスパトレイユは、乃莉子が強制ではなく、自分から進んで付けてくれた名前を、変える気は更々なく。


これが本名だと宮田を脅し・・・いや・・・納得させて、ネームプレートを書き換えさせた。


そんな俺様天使のイケメン店員の噂は、あっという間に広がり、噂を確かめに女性の客足が増えた。


ミルクティー色をした、緩い天然パーマの店員は、持ち前の愛想の良さと、百戦錬磨の女性の扱い方で、たちまち人気者になり、今やメルヘンになくてはならない存在になっている。


万人を虜にしてしまう魅力的な笑顔で、今日もファン達の接客を楽しんでいた。


「乃莉子。
働くって、いいもんだな!」


そんな言葉が飛び出る程に、キャスパトレイユの毎日は充実しているようであった。


< 44 / 142 >

この作品をシェア

pagetop