天使の舞―後編―
「ごめんごめん・・・。
待たせたね。」


「いえ、こちらこそ。
忙しいのに、すいません。」


乃莉子は、そう言っていつもの伝票をエプロンのポケットから取り出した。


「いつも配達してもらって、助かるよ。
俺さ、乃莉ちゃんに会えるの、楽しみなんだよね。」


伝票をヒラヒラさせながら、レジの前で、矢崎は照れもせず、普段通りの口調で言った。


「もう、矢崎さん!
からかわないで下さいよ。
あの子達、睨んでます。」


乃莉子は、チラッとテーブル席に目配せをする。


「え~!俺、真面目に言ってるんだけどなぁ。
乃莉ちゃんさぁ、ホントに彼氏いないの?」


「・・・・・っ!!」


ポッと顔が赤くなり、何故か乃莉子の脳裏に浮かんだのは、ミルクティー色をした緩い天然パーマの天使の笑顔。


「いません!いません!
いませんよぉ!!」


乃莉子は、目の前でチラつく天使の顔を、全力で振り払った。
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