天使の舞―後編―
乃莉子はしゃがみこんでいた玄関から、フラフラと台所へと移動した。


「お腹空いたなぁ。」


乃莉子の頭の中をよぎったメニューは、キャスパトレイユの大好物となった、オムライス。


『乃莉子の特製オムライス、食いたいなぁ。
作ってくれよ。』


幾度となく、聞いた台詞だ。


『うめぇ！
何回食っても、うめぇな！
乃莉子はオムライス名人だ。』


本当に美味しそうに、オムライスを頬張るキャスパトレイユを見ると、乃莉子まで幸せな気持ちになってくる。


そんなキャスパトレイユの笑顔が思い出されて、乃莉子は嬉しそうに目を細めた。


「作ろうかな。オムライス。」


乃莉子は冷蔵庫に手をかけた。


･･･。


それほど時間を要さずに、食欲をそそる温かい匂いが、部屋の中に広がった。


乃莉子にとっては、久しぶりに１人で摂る食事である。


こんなに１人で居る事を寂しいと感じたのは、始めてだ。


「なんか･･･美味しくない。」


一口オムライスを口に運んで、乃莉子はスプーンを置いた。


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