天使の舞―後編―
ライラは、早足で乃莉子の側に歩み寄ると、腕を掴んで引っ張った。


「え・・・?何・・・?」


ライラは眉間に皺を寄せて、乃莉子に食ってかかった。


「乃莉子様は、何をしておられるのですか?
悪魔と楽しそうに行動を共にするとは、どういう了見です?」


「あ・・・それはですね・・・。」


乃莉子が、これまでの経緯を説明しようとした時、イザヨイがタッと走り出した。


ヨゾラを見て、全てを悟ったのだ。


ヨゾラが隠すことなく黒い翼を見せているのは、悪魔だとバレても問題ないから。


と、いうことは・・・。


「僕、お兄様の命令で来たんだよ。
観念して、イザヨイ。」


逃げ出そうとするイザヨイの前に、一瞬で移動して、にこやかに言い放つヨゾラ。


「魔界へ帰るよ。」


「や・・・。
やだ、やだ、やだ!」


イザヨイは藍色の長い髪を振り乱し、精一杯の拒否反応を返す。


「あたしはキャスパトレイユ様の妃になって、乃莉子みたいに愛してもらうの。
天界で自由になるの。
あたしはもう、あの部屋に押し込められて暮らすのは、イヤなの。」


幼い子供のように、イザヨイは自分の思いをヨゾラにぶつけた。


「イザヨイ・・・。」


そんなイザヨイを、ヨゾラはギュッと抱きしめた。



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