天使の舞―後編―
「イザヨイ、大丈夫。
もう、大丈夫なんだ。
お兄様がね、一緒に暮らそうって、言ってくれたんだよ。」


「うそ・・・。
片翼の双子のあたし達が、一緒に暮らせる訳ないよ。」


抱きしめるヨゾラをグッと押し返して、イザヨイは不安な瞳を揺らした。


そのイザヨイの視線の先に映る、キャスパトレイユの姿に、イザヨイは思わず声を上げた。


「キャスパトレイユ様!
行かないで!」


イザヨイの目に飛び込んで来た、光景とは。


フラフラと立ち上がり、乃莉子の元へと歩くキャスパトレイユの姿であった。


締め付けられるような頭の痛みが和らいだキャスパトレイユは、ゆっくりと顔を上げて聞き覚えのある声のした方に、目を向ける。


そして目の前にたたずむ乃莉子を見て、キャスパトレイユは、衝撃を覚えた。


霞がかかっていたような、モヤモヤとした思考が、一瞬にして晴れたのだ。


「乃莉子。」


キャスパトレイユは、愛しい妃の名を間違う事なく呟く。


「やだ・・・。
キャスパトレイユ様。」


イザヨイは、キャスパトレイユの記憶が回復したであろう事を、悟った。

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