天使の舞―後編―
そんな2人の微笑ましい姿を、見せつけられたイザヨイの心境たるや、嫉妬の炎でいっぱいだ。


「や~だ~。
キャスパトレイユ様!
乃莉子から離れて!
あたしを見てぇ!」


必死の形相でキャスパトレイユに訴えるイザヨイは、しっかりとヨゾラに抱き止められて、動けずにいる。


きっとライラもトルティナも、想いは同じかもしれない。


しかし彼女達は、好きだからこそ、キャスパトレイユの幸せを願う方を、選択した。


あれほど嫌がっていた覇王に、なってもいいとさえ、キャスパトレイユの口から言わしめた乃莉子。


それは、間違いのない事実である。


キャスパトレイユの本気の恋心は、イザヨイごときが小手先の魔力でどうこう出来るほど、軽い気持ちではなかったようだ。


いくら面倒臭がりの、ワガママ王子でも、王子は王子。


半人前の魔力になど、完全にかかっていた訳ではなかった。


むしろ不意をつかれたとはいえ、天界の王子を名乗る者が、片翼の悪魔の魔力に弄ばれたのだ。


完全なる、キャスパトレイユの失態であろう。


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