天使の舞―後編―
うつむいたまま、軽く目を瞑り唇を噛んで、キャスパトレイユは、シュカの言葉を思い出していた。


それは数日前。


母である天王妃シンシアから、乃莉子が人間界へ帰ったと聞かされたキャスパトレイユは、一目散に天魔の鏡へと駆け出した。


乃莉子を連れ戻す。


その一心で、キャスパトレイユは無我夢中で走った。


「キャスパトレイユ様!
王子よ、お待ち下さい!」


風のように走る王子を追いかけて、有能な天王の側近が背中越しに声を飛ばした。


「何だよ!?」


キャスパトレイユは呼び止められた事に苛ついたが、声の主がシュカであったため、不本意ながら足を止めて振り向いた。


「乃莉子様をお迎えに行く前に、やらねばならぬ事がおありでしょう?」


「・・・・・?
やらねばならぬ事?」


シュカの言葉で、キャスパトレイユは眉間にシワを寄せた。


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