カラス
鏡の前、
黄色のリボンで両サイドに括って、
お気に入りの白いロングドレスで
ふわりとお辞儀をしてみる。
ぱちぱちぱち―――…。
すぐさま聞こえだした拍手に
パァーと輝いてしまう顔。
「とてもお似合いだよ、伊織お嬢様」
とろけるような優しくて甘い声。
どうしようもないくらい、
私はこの方に恋してる。
「優輝さん!」
にっこりと笑う彼は、
私の婚約者である西連寺優輝さん。
5つも年上の方。
確か、22歳だって言ってたから。
「学校は最近どうだい?」
「あまり出席できていないんです。
父が社交ばかりで……」
「それはいけないね、
学生は勉強する最大の時期さ。
後悔しないように、僕が社長に話してみよう」
そう言って、頭を優しく撫でられる。
―――心地良い。