カラス
「…末恐ろしい子どもですね」
「見かけだけの『子ども』、だけどね♪」
碧嵐が笑う。僕も笑った。
このような『笑い』が、
水面下での《試し合い》になる。
ここで心を晒してはならない。
「……そうです。レオから貴方へ、
依頼を預かっていたのでした」
薄気味悪い笑顔を絶さず、
碧嵐は胸元に手を伸ばした。
すると茶色の封筒が姿を現す。
「そう…、ありがと♪」
それを受け取るとすぐに、
碧嵐の前で開いた。
中には三枚の写真と、
その写真に写るターゲットの情報が
書きこまれたプリント。
期限は…明後日。
なるほど。
一日に三件。
三人とも血の繋がった兄弟。
依頼主は……、
「後継ぎ問題かぁ。人間って恐いなぁ」
三人が三人とも、
殺し屋(僕)に依頼をしているのか。
「碧嵐下がって。邪魔だから。
じゃないと殺すよ?」
資料に目線を寄越したまま、
スーツの懐にある拳銃に手を掛ける。
「………仰せのままに」
碧嵐はスッとお辞儀をすると、
僕の部屋から出ていく彼。
碧嵐って中国人の癖に、何で
西洋風のお辞儀をしたんだろ…。
…まぁ、俺には関係ないけど。