カラス
*
「和彦さん!?何をしてるんです!?」
「え…、親父の墓参りでも…と…」
自分の姿を見れば片手にバケツ。
あぁ、汚れるのが嫌いな姉さんは、
こんな姿見たくないか。
「そんなことよりも早く、
この家を誰が継ぐのか……、
はっきりさせましょう?」
「また、その話ですか…」
俺は城ヶ崎和彦。23歳。独身。
俺は先日父親を亡くした。
母親は既に他界しており、
頼みの綱であった父もいなくなったのだ。
しかしまぁ、父は所謂金持ちで。
当然、遺産問題が出るわけでして。
今日の出勤は午後から。
それまでに墓参りに行きたかったんだけど、
どうやら無理そうだ。
「だから、俺はいらないですから。
兄さんと姉さんで決めて下さい」
「ふんっ、まぁそれが当然よね。結局貴方は、
私達とは血の繋がりのない余所者だし」
「…………はい。
だからお二人で決めてください」
そしてそんな義父と俺は、
血が繋がっていない。
まだガミガミと五月蝿い姉さんを振り切って
自分の部屋に戻る。
―――――ことはどうも出来ないようだ。
「やぁ、二人とも。おはよう」
「……おはようございます」
「兄さま…、おはようございます」
兄の登場だ。