カラス
「今日も良い天気だ。皆暑さに負けず、
仕事に励んでくれよ」
俺と姉さんの肩にポンと乗せられた手には、
確かに温もりがある。
「まぁこれは、
次期社長である僕の頼み事さ」
「――――クッ」
「――――ッッ!!」
急に力強く握られた肩に、
爪が音を発てながら食い込んだ。
「――っ!!次期社長は私よ!
勝手に決めないで!」
ガッと兄さんの腕を振り払い、
姉さんが叫ぶ。
「あ?長男が継ぐものだろう?
何を言っているんだ」
兄さんはそれに不機嫌そうに返事を返した。
「そんなもの知らないわよ!!
私の方が会社をもっと大きくできる!!
頭の弱い貴方には無理だわっ!」
「頭が弱い…?はぁ?
お前みたいな出来損ないが継げるとでも?
はっ!!馬鹿じゃないのか?」
「貴方よりはマシよ!根性腐れ!!」
「なんだと…っ!!」
飛び交う罵声。
俺はオロオロと立ち回るだけ。
だが、そんな俺にも火の粉が飛んでくる。
「だいたい和彦さんが悪いのよ!
和彦さんを養子で引き取るなんて、
お父様は何を考えていたの!?」
「え、俺は…。すみません。…しかし!!
遺産はお二人で決めて宜しいですから」
「腹の下で何を考えたら、
その台詞が出るんだか…。
他人の考えていることなど、
解りはしないな」
「兄さん…」