カラス
男がそんな俺に気づいたかのように
ニィと笑う。
背筋が凍った。
「――――っ!!」
次の瞬間、身を翻し逃げようとした
俺の背中は、酷く熱いものに刺し抜かれた。
腕が、震える。ナイフの落ちる音が聞こえた。
なんだ?痛い。イタイ、熱い。
あれ?
「あ…、俺、刺された、の…、か?」
自分の膝が折れたのに気づかず、
頭から崩れ落ちた。
彼は笑っている。愉快そうに、楽しそうに。
――いやだ。まだ死にたくない。
――――まだ生きていたい。
『まだ――を諦めたくない』
「待...て。待て...よ...」
必死に手を伸ばす。
けれども彼は微笑むばかり。
俺の手は彼に届きはしない。
「…喋らない方がいいよ?
その方が安らかに死ねるから」
冷徹な低い声。
この声は彼が出しているのか?
「なに..、が、もく..て、きだ?」
金か?遺産か?屋敷か?
「あえて言うなら君達だよ♪
君達を全員殺しに来たんだ☆」
「兄..さ...た、ちに手、だす...な..。
だす、ん..じゃ、ね..ぇ」
必死に言葉を吐き出す。
すると柔らかい微笑みが向けられた。